さまよう刃

torippi2008-06-11

東野圭吾の作品。売れてるみたいだから買ってみた。
容疑者Xの献身』は男性のナルシズムやセンチメンタルが色濃くある印象で、
あんまり好きになれなかった…以来、彼の作品は平積みされてても、
ふぅん。程度にしか思ってなかった。
でも、少年法のモンダイを元に繰り広げられる、<正義とはなんだ??>って
いう命題があるという、この物語をどう収束させるんだろう??って、
凄く興味があった。


結果(オチ)は、そういうことになるだろうな〜。っていう終わりだったけど、
でも、そこにいたるまでの物語、人物描写が、巧かった!面白かった!
特に、誠という加害者の友だちの設定の気が弱い男の子。きっと彼が一般市民の
陥り易い視点に近いと思うんだけど、彼の描写はよかったな。
最後の彼の終わらせ方は、短絡的に考えるんだな。って思ったけど、それもこのキャラ
に合っている。それにしても彼の「誠」っていうネーミング。皮肉だな。


被害者の苦しみ、憎しみの描写も、それぞれの親子愛の描写。(裏テーマ?第2のテーマやね。)
うまかった。ぐっときた。
私は物心がついたばかりの頃は、ファンタジー少女だったから、本当の悪人は存在しないだろう。
って、おめでたい考えをしていたけど、思春期をすぎてからはずっと思ってることの1つのこと。
なんだけど、悪人って存在する。絶対悪って悲しいけど、あると思う。
それは、いろんな実際の事件を見てても思う。世の中救いのない事も沢山ある。
だけど、それを物語として、ただ、その絶望を絶望的に描いているのではない。そこまで
深くはえぐっていない。そして抉る事をしなくても、登場人物たちのの心理描写を丁寧に
描く事で、ひとつの疑問を人に投げかける事が出来る物語。


終盤は、きっと作者も興奮して、その映像を頭にクリアに浮かべながら書いたんだろう
な。っていうテンポ感とエンタメ感。
日本人がハリウッド映画が好きな由縁ここにあり。現代日本人の美学ここにあり。って感じ。


ここのところ、最近よく友達や先輩によく聞いている。
この物語の命題の答えを。
そして、迷惑がられてる(笑)