Jエドガー

先日はJエドガーを観に行きました。
FBI初代長官・フーヴァーの生涯をクリントイーストウッドが描いた作品です。
名声・悪名ともに名高い男の、内面に迫った物語で、もちろんアメリカの歴史
や事件も描かれているんだけど、そこはきっとメインではなく、1人の人間としての葛藤や苦悩や性癖に
光を当てて描かれています。


物語は老年のフーヴァーが、記者に自分の回顧録を書かせるために、過去を回想する
という形で進んでいきます。彼は、アメリカのFBIというものを確立させると同時に、
嘘をついてまでFBIの社会的地位を確立させていきます。そして、自分がゲイであり
(当時ゲイは今ほど市民権を得ておらず、差別の対象でした。)、ゲイであるということ
を認めたくないという抑圧、母親(ジュディ・デンチ)の絶対的な価値観の元にマッチョな男
として生きていきたいという抑圧からはじかれるように盗聴を続け、独裁者であり続けるのです。
(脚本は「ミルク」のダスティンランスブラックです。)


クリント・イーストウッドらしく、物語は淡々と進んでいきます。
過去と現在が入り混じり、虚と実が入り混じりながらも淡々と進んでゆく物語は、何を信用したら
いいのか、どこかに嘘があるのか?全て嘘なのか?それともすべて真実なのか??観た人を多少混乱させます。
でも、実在した人物を描くにあたって、とても誠実なアプローチだな。と思いました。
本当のことは、もしかしたら誰にも分からないかもしれないから。


それにしても、公私ともにパートナーだといわれているトルソン役のアーミーハマーさんの若いころ、
とてもいいです!「ブロークバックマウンテン」の時は、ゲイの恋に切ないと思っても、キュンとは
しなかったけど、最初からの立ち振る舞いとか、ディカプリオとのやりとりや、途中のなぐ
り合うシーンとか、
胸キュンでした。彼は「ソーシャルネットワーク」でブルジョアな双子役を1人で演じた人ですが、
スーツビシッとさわやか系がとても似合います。


そして、エンドロールの音楽がとても美しくて、ある一人の人間が生きて、その人間の命の光
を見ただけなんだけど、人が生きるということは(とても酷いこともしてきた奴ということも加味しているのに!!!!)
哀しくて美しくて愛おしいものだな。という余韻を残す、いい映画だったと思います。