悪人

torippi2007-06-17

吉田修一の本は、ひとの陰や鬱の部分を噛み砕いて
表現することが上手で、「パークライフ」を読んだ時は「ん?」としか
思わなかったんだけど、
遡って「最後の息子」を読んで、この人ってすごい。
と、思い、それから新刊が出るのが気になっている作家の1人でして。


「悪人」。これもすごかった。ドスーンとのしかかって離れないです。
九州のある土地で起こった殺人事件を軸に、被害者・加害者・容疑者たち
を描いていく物語。
これも人の陰や鬱や、見たく無い部分を一定の低い温度で描いている。
すごく痛くて、やりきれないんだけど、台詞や描写がなんていうか…
こういう言い方は語弊があるかもしれないんだけど、ポップなので、
ぐいぐい引きずられてしまう。
人物の設定も、東京でなくて九州で、こういう人間で、こういう環境で…って
いうのが上手で、すごく冷徹で、でも1ミリの理想を持ちながら、
(もしかしたらその理想さえ、人の業なのかもしれない…)
人間そのものを見つめて描いていて。


やっぱり、吉田修一(…映画監督やったりなんかよくわかんないところもあるけど)、
目が離せないな。すごい人。と、おもうのです。